2001年12月のドイツ・ウィーンライブツアーの御報告です。


 Mo10. Dez


 成田の出発ロビーはすっかり毛の生え揃った大人でさえもウキウキさせる。
「あっ!チケットは?」「ここにあったあ〜?」
「あっ!パスポート!」「手に持ってるう〜?」
いちいち焦ったり安心したりするのも出発前の醍醐味というもの。
恥ずかしながら、不肖、私もルンルン気分だ。
タケシに到っては荷物カートに乗っかって滑っており、もはや説明の余地無しだ。
 ところがチェックインの女の一言によって、そのワクワク感はすっかり消し飛んでしまった。
「手荷物が多過ぎるので乗せられません」
女は、桂歌丸がシャレを言った後のような「どうだ」といわんばかりの半笑いまで浮かべている。
タケシの顔色がみるみる曇っていく。
ま、まずい!
ハマの大魔神(本当のタケシ)が蘇る!
「そうですねー今回は特別ということで…」
何よもー、やれば出来るんじゃないのよJALったら。
大魔神は半分だけ蘇り、
「荷物、絶対投げるンじゃねェじゃン」
と、横浜弁だったかどうか忘れてしまったが、とにかく捨てぜりふを残してチェックインした。
ユーリカ達はもう機内で待っているはずだ。
免税店へ急ぎ、なぜか明太子を買って、さあ出発!
 今回はユーリカ!の4人(和久君、ミユキちゃん、サポートメンバーの堀口君とサニーさん)と一緒のドイツツアーである。
12時間という長いフライトではあるが、堀口君はいつものようにベルボとウエスタンブーツだ。
(そして堀口君のあだ名は「グッチョン」だ。)


 フランクフルト空港に着くとアンドレアス達が迎えに来てくれていた。
空港から地下鉄に乗り中央駅を出ると、とても寒いが久しぶりに立つ異郷の地にいよいよ実感が湧いてくる。
「新宿みたいっスねー!」
…おいおい、グッチョーン。
別の寒さがグッチョン方面から吹いて来てしまった。
アフリカ料理を食べに行く(寒いから)。


 Di11. Dez


 泊まっているヨギの家で天才バカボンを読んだり、機材のチェックをしたり、テレビを見たりしてゆったりと過ごす。
(ちなみにヨギは今回ドイツツアーを企画してくれた『shibuyahot』というレーベルの代表者である。)
 夜、クリスマスマーケットに行く。
ドイツではクリスマスを家族と一緒に過ごし、そのための飾り付けやロウソクなどをここで買うのだ。
昔の日本の正月前のようでもあり、たくさんの人で賑わっている。
ハマの大魔神もサンバホイッスルなど買い、歩きながら嬉しそうにプッピピピーと吹いていた。


 Mi12. Dez


 昼が短いのと時差ボケでまだこちらの時間感覚に慣れない。
遅く起きると、ヨギの家の同居人であるカーステンが朝食の用意をして待っていてくれた。
パンとハムとチーズがいちいちウマイのでいっぱい食べる。
悠然と食後のティーなどしているともう日が暮れてきた。
まだ午後4時だ。
 明日から6日間の遠征のため、荷造りを始める。
タケシといずみちゃんは、6日分の衣類がちょうど入るバッグを持っておらず、途方に暮れていたので、
「3人の服を一つにまとめようか?」
と、僕のスーツケースを空にして差し出した。
これは我ながらグッドアイデアだ。
僕は「実に良いことをした」という顔でうなずきながら、嬉々として衣類を詰め込む二人を見て目を細めていた。
しばらくしてスーツケースに目を移すと、僕の服を入れるスペースが無い。
「石垣君、サンキュー?」
…まったく、「ナヌ!?」な奴らだ。


 Do13. Dez


 結局自分の衣類を入れたバッグを背負うことになり、
「2度とスーツケースは貸さない」
の誓いを胸に、フランクフルト中央駅から特急でハンブルグへ。
ライブ会場である『FRINZENBAR』に着くと、実に重そうな機材が到着していた。
甲子園の連投で肩に爆弾を抱えている僕に運べるだろうか?
「いや無理だろう。」
と自問自答して(ボヤボヤして)いる暇も無く、次々と機材を渡される。
機材を運び入れる皆の顔からは、ついに始まるライブへの緊張感がみなぎり、引き締まって見えた。
う〜ん、カッコイイ。
 リハーサルを終えてイタリアンを食べに行く。
ピザとパスタとハンブルグ産のビールでいずみちゃんも絶好調である。
ライブ前には彼女にうまい物を食わせるに限る。
(オットセイに芸を仕込む要領だ。)


 ライブが始まる。
黒ずくめの妙な日本人のパフォーマンスで、ドイツ人が踊る踊る!
FRINZENBARのオーナーも大喜びで、大盛り上がりの中、2回のアンコールに応える僕達。
日本でもやったことのない『DRIVE MUSIC』を初めて演奏した。
ああ、思えばこれが3年前ドイツで出したQYPのデビュー曲。
まさかそのドイツで演奏することになろうとは!
持って来たCDは即完売だ。
 感慨にひたっている頃、いずみちゃんはオーナーの経営する隣のクラブへ行き、お立ち台で踊りまくっていたらしい。
う〜ん、マイペース。
ユーリカ!も更に会場をヒートアップさせ、アンコールに向かう彼らの周りは相撲の花道状態だ。
 マイナス10℃という極寒のハンブルグの夜は熱く盛り上がった。


 Fr14. Dez


 ハンブルグ街中の公園でTVインタビュー。
その後、ハンブルグの街を歩くQYPとユーリカを撮りたいというので、
「わあベンツ」「わあポルシェ」
とサービスしながら歩く。
 しかし、レコード屋に入ったとたん、レコードジャンキーどもの体に発作が現れ、サービスどころではなくなる。
特にタケシと和久君の症状は深刻で、わざわざ同じ棚に手を突っ込んで、レコードの奪い合いになっている。
「うっひょひょひょ〜レコードじゃあ、レコードじゃ〜」
などと取り乱した仲間を見るのはつらいので、そうなる前に(そうならないと思うが)他のコーナーへ行くことにした。
試聴器の前にはヨギ、アンドレアス、タケシ、和久君の4人が、ニヤニヤしながら各々20枚ずつのレコードを持って並んでおり、さながら中毒患者の点滴待ちのごとしだ。
TVの人はあきれてしまったのか、いつの間にかいなくなっていた。
 夜、スペイン料理を食べてからプライベートパーティーが行われるクラブへ行く。
サニーさんは「ドイツサイコーだー」とメチャメチャ嬉しそうに女の子達と写真を撮っていた。


いずみちゃんとヨギ

グッチョン、泉、アンドレアス(何じゃこの写真は)
プライベートパーティーにて

フロリアン&フランクと

QYPTHONE