Sa 30. Aug

　今日は市場へ行き、外で朝食をしてからFM局のインタビューという予定なのに、早朝ジョギングのせいで他の人たちと全くペースが合わぬタケシ、朝寝である。泉ちゃんも「今日はァ、朝食はァ、いらない…かな？」などとグズグズしている。
　しかたなく僕とバブシーで出かけようとすると、「さてと…」とか言って泉ちゃんは勝手に自分だけの朝食の準備を始めた。要するに外へ出るのがめんどくさかったのだ。
このぐうたらな二人を迎えに一度部屋に戻るという予定が増えたせいで、自分たちの朝食の時間が取れなかった。市場を観光しながら僕はケバブを買い食いだ。
　FM局の約束の時間が迫ってしまい、急いで帰ってきたが二人とも昼寝してやんの。慌てて着替えさせて出発。ところが途中でタケシが「大事な物を忘れた」と取りに戻る。何のことはない、粉末のダイエット用食品（彼は毎食前、この変な粉を服用する）を取って来ただけだ。

　この忙しいのにお前らは〜〜！！

　地下鉄の駅に着くが、放送局のスタッフに渡すCD、忘れた…
こんなキップソーンのお守りを受け持つバブシーは軽く脳しんとうを起こしたようだ。
もうホントごめん、バブシー…
あきれて脱力しながら、彼女はCDを取りにアパートへ走って行った。

　『FM4』（FMフィーア）はJ-WAVEのようなテイストの、オーストリアを代表する音楽ステーションである。インタビュー収録が終わって帰る途中、突如「髪切りたい！」と泉ちゃん。
土曜日は3時を過ぎるとあらゆるお店が閉まってしまうウィーンだが、バブシーとクリストフは嫌な顔ひとつせず3件くらいまわってお店と交渉してくれた。
美容院のソファーに疲れて座り込んでしまうバブシーに、今度はタケシが「今かかってる曲何か店の人に聞いて！」ときたもんだ。
　かわいそうにこの後彼女は、帰り道の分からない泉ちゃんのために、美容院で2時間以上も待つことになる。
お前ら、バブシーはお母さんじゃないんだぞ！

　巨大な市長官邸（メイヤーズハウス）の前にある広場でフェスティバルをやっている。出店で世界中の料理が食べられるような催しもあり、各自好みの料理を買ってきて夕食にした。バブシー母さんにとっては今日初めての食事である。雨がポツリポツリきていたが、テーブルにはパラソルがついていたのでそれほど不便はない。
　当然のことながらタケシはアジアの料理ばかりを持ってきて、醤油味を楽しんでいる。
彼は「そこだと写真が撮りにくいでしょ」と珍しく気を遣い、僕に席を交換するよう勧めてくれた。換わってみると、そこはパラソルからはみ出ており、背中にポツポツ雨が当たる場所であった。
　…そういう精神だからキップソーンはわがままだとか言われるのである。