2003Austria

 Do 4. Sep

 ウィーンから車でグラーツへ向かう。
早朝、予想外に荷物が多くて乗り切らないので、僕とバブシーの二人は特急で行くことに変更。今日から4日間は全員で車で移動の予定だったのだが、波乱含みのスタートとなってしまった。また、運転手はクリストフ一人しかいないので彼には大変な負担である。車チームに別れを告げて、ウィーン南駅へ行った。

 約2時間半後、グラーツ駅に到着。グラーツは2003年の『欧州文化首都』に選定されている町であり、今年は様々な文化イベントや芸術祭が年を通じて催されている。我々キップソーンのライブも、そのフェスティバルの一環として行われるのである。駅前広場には町のイメージカラーである青と緑で『0003カルチャーキャピタル・グラッツ』と書かれた旗が至る所にはためいていて、町全体がお祭り気分なのだ。クラクラするほど太陽が照りつけており、ここは夏本番である。車チームは先に会場に到着しており、タケシと泉ちゃんと荷物を一度降ろした後、クリストフは駅まで車で迎えに来てくれた。
 しかしクリストフはなぜかイライラしている。うまくエンジンがかからず、「ヘイヘイヘイ!」とか言いながらボンネットを開けてはバッテリーを叩いたりしている。「運転疲れたでしょう」と話しかけると、「うん、タケシと泉はずっと寝てた」とか答えるのだ。猛スピードで飛ばして、車線をはみ出たちょっと邪魔な車に罵声を浴びせる。普段温厚なクリストフには似合わぬ、余りの乱暴ぶりである。
連日ライブの疲労、運転の疲労、自分勝手なキップソーンへの日々の気配り、そして何日もセックスおあずけの状態で、彼の冷静な心はついにショートしてしまったようだ。「シャイセ!」「ズッピ〜〜、ダンケ!!」と、多分ドイツ語のスラングと思われる荒っぽいアクセントの言葉を発しながら、荒っぽい運転で会場に着いた。

 会場はコミックデザイナーの展示会とライブスペースとを共有している。そのためリハーサルをしている向かい側では、デザイナー達が準備に追われて慌ただしい。
 リハーサルを終え、イタリアンレストランで食事をしたり、クレープのようなお菓子を食べたりする。それにしても昨日のセックスショップ以来、猥談解禁になってしまったのか、僕らの会話はエロい内容が中心である。共同生活一週間、みんなだいぶタマっているのだ。
 チンコがでかくなる一方、ウンコもでかい。肉主体の食事は、僕らの肛門に一回につき20cm級の大物を2本ひねり出すことを余儀なくしている。今日はバブシーの友人のエヴァの部屋に泊まらせてもらうのだが、部屋に入って早々、僕のウンコが流れない。初対面のエヴァの僕に対する第一印象は『エロくてウンコがでかい人』になってしまった。
 泉ちゃんは具合が悪いと言ってベッドに倒れ込むが、もう出発時間だ。時間が無いのに部屋にあったディジリドゥをのんきに「ボォ〜〜」とか吹いているタケシ、かたやイライラしっぱなしのクリストフ、眠り始める泉ちゃん、エロい話ばかりしている僕とバブシー、そして流れぬ僕のウンコの来襲に、エヴァは「何だろうこの人達は…」と部屋を貸すことを激しく後悔しているようだ。ライブ開始まであと30分。

 タケシのDJが徐々に会場を暖め始める。今回の会場はいわゆるクラブではないので、お客さんが踊ってくれるかどうかバブシーは心配していたらしいが、あいつは腕っ節だけでやってきたほんまもんのディージェイやさかい、心配あらへん。「ワイの生き様、よう見とき!」という彼の選曲によって、たちまち会場は踊り狂う男女でいっぱいとなった。そんな生き様よりも、ツアー随一の可愛さと思われるたくさんの女の子達に僕の目は奪われる。もの凄く腰をクネらせて踊っている女の子などもいて、タマっている僕には目の毒である。
 満を持して僕と泉ちゃんもステージに繰り出し、曲をスタートさせると、先ほどの心配が杞憂であるほどにグラーツの会場はクラブと化した。
東京から誇りを持ってお贈りする『アシッドジャズボサノバジャパニーズラウンジポップハッピーワイアードサウンド』(ポスターに書いてあった僕らの紹介コピー)である。
タケシと泉ちゃんのコミカルな動きと、踊らせるために緻密に組み込まれたMPCのシークエンスに合わせて、女の子達の腰のくねりも激しくなる。
言葉による交流だけでは、こんなくねり方は絶対にお目にかかれない。
怒濤のビートに「キャーキャー!」というたまらないレスポンス、今この会場は『欧州文化首都』の中で最もアツいキャピタルであろう。
飽くことを拒否したオーディエンスの要望に応え、アンコールでなお一層盛り上がる。
これもまた熱い文化交流の一コマなのだ。

 ライブ後はサイン会、文化交流のため僕は漢字で『石垣健太郎』と書いた。「何て意味?」と聞かれたので「ストーンウォールヘルシーファットガイだ!(石の壁の健康な太ったヤツ)」と説明してあげた。ちなみに『中塚武』は「センターグレイヴソルジャー(墓の真ん中の侍)」である。
展示会をしていたデザイナー達からは、数々の自作の品やライブ中に描いたイラストをプレゼントされた。クリストフもいつもの優しい笑顔に戻っているし、エヴァも非常に楽しんだようで、これなら快く部屋を貸してくれそうだ。

 大きめのタクシーに全員で乗り込み、ガソリンスタンドでビールなどを買う。コンビニが無いので、オーストリアの夜中の買い物はもっぱらガソリンスタンド内の日常品売り場で済ませるのだ。
 部屋で打ち上げ。どんどんエスカレートする女三人のエッチなガールズトークの内容は、あまりにも赤裸々なためここに書くことはできません。



グラーツ駅


会場に投影されたバブシーのVJ


この日のフライヤーです


グラーツの街は


どこもかしこも素敵です


イタリアンレストラン。また泉ちゃん切れちゃった


クレープみたいなものです。甘くておいしい


素敵な建物と素敵な笑顔


エヴァは偶然僕と同じカメラでした


ライブ開始


オーディエンス達








ライブ中にイラストを描いてくれました
僕の姿はカエルを食った後の「顔なし」ですね


けがをしてしまったタケシをいたわる優しいエヴァ


ねえ〜まだ飲まないの?


飲みましょう


エロ話中