石垣の証言 |
皆さんの証言 |
帰ろうとして店の扉を開けると、もの凄い勢いで上から『幕』が降りてくる。僕の人生の『幕』が降りたのである。
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店を出ようとする石垣がそのまま入り口の所で座り込む。 |
空白。 |
座ったまま後ろへ倒れそうになる彼の体をタケシが支える。
酔いつぶれた人なら、介抱する人に体を預けるくらいの多少の意識があるはずだが、彼は違った。
感電した人のように、体を反り返らせて扉の取っ手を掴んだまま離さないのだ。
人間がこんなになっている状態は実際に見たことがない。これはヤバイのかもしれない。
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「扉から手を離して」とタケシの声が聞こえたが、そんなことをしてはいけないのだ。その時『扉から手を離さないこと』は、僕にとって大事なことだった。なんのこっちゃわからんが。 |
店外の壁の方に運ぶため、タケシは「石垣さん、扉から手を離して」と言うが、ビクともしない。
無理やり彼の手を剥がし、体をひきずるが、彼の体は引きつけを起こしたように突っ張っていてなかなか運べない。
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空白。 |
石垣の口は半開きで、眼球が上へ引っ張られて白眼を剥いており、手足が痙攣している。
泉は「石垣君が物体になっていく…」と成すすべ無くその様を見つめ、タケシもロバートもいよいよ迫る彼の人生の終わりを確信する。「石垣さん、こんな外国で死ぬのかあ…」友人がオランダで死亡するのである。
噂を聞きつけた店の人が出てきて「ああ、これはドラッグアウトだ」と言い、店内に何かを取りに行く。
彼の口振りだと、どうやら石垣は死んでないっぽい。
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ラムネだあ。
椅子だあ。後頭部がジワジワしている。
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店員はラムネ、椅子、水と手際よく持ってきて、ドラッグアウトの応急処置をタケシ達に託し「10分で元に戻るから」と笑顔で去っていった。彼の慣れた感じに安心し、友人の死亡という恐怖から解放される。
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まわりの景色の白色の部分が全部、星、である。
「白い部分が全部、『星』だあ〜」興奮気味に全員に説明している。
赤黒い模様が目の前でうねっている。
膝がジワジワしていて重い。
ジワジワが足首まで降りてくる。
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石垣に水を渡すと突如「あ、どうも」と覚醒する。つまり、死んでない。 |