2003EU

 11月8日(土曜日)


 ユーラシア大陸の東側に浮かぶ小さな島国、アジア最大の先進国・日本へやって来まシタ。日本の玄関は千葉デス。正確に言うと「千葉県成田市古込字古込1-1」ダ。NEXという特急電車の座席に疲れた体をうずめると、窓の外にはのどかな田園風景が広がり、これは思ってたトーキョーシティじゃナイヨ。思わず眠りに陥り、終点のシンジュクで目が覚めると、そこにはまさに風変わりな極東の都市の光景が拡がっていたヨネ。

 ドアが開くと、スポーツの実況中継のようなけたたましいアナウンスがスピーカーから流れ、ホームから落ちそうなくらい人が溢れ、同じ服を着た多くの少女達が街娼のようにスカートから太ももをさらけ出していて、おそらくこれは、駅のホームで何かお祭りヤッテンダヨ。
 そして11月だというのに異常なほど蒸し暑く、これだけ湿気が多ければ、トーキョーの人達は空気中からでも水分が摂れるはずだが、一方、ホームには信じられない台数のジュースの自動販売機が設置されていたりしてバッカジャネーノ。
 ギュウギュウ詰めの電車の車内には本を読む人、携帯電話の画面を見入る人、おびただしい数の漢字の広告があって、誰しも知識の収集に余念が無いデスシ。街全体に張り巡らされた電線とその下にびっしり収まっている住宅、全ての街道は自動車が占拠していて身動きが取れないノデR。

 な〜んつってなんつって。まあ、久しぶりに帰って来た『TOKYO』に感じる何ともエキゾチックな印象を、僕は成田から家までの数時間楽しんでいた訳である。しかし一回の睡眠でそのイメージは元のオレの故郷『東京都』に戻っていった。
 昼、それぞれの我が家へ帰った僕たちは、夕方まで眠り、今夜再びシブヤで出会うのだ。不思議なもので、僕らはこれまでの20日間日本とは全く違う生活をしてきたのに、一度寝て起きたとたん、納豆を食い、バラエティ番組を見、メールチェックをし、リハーサルの時間までの交通事情を正確に計って携帯を見ながら急ぎ足で出かけるという、実に典型的なジャパニーズスタイルを遂行し始めるのだ。日本人の血は争えない。

 渋谷から『オルガンバー』までの道のりを、MPCを担いで人ごみや渋滞をすり抜けて歩いて行く僕。時間ギリギリであまりにも急ぎ足だったため、ついつい車のサイドミラーにぶつかってしまった。運悪くテールランプが透明で、後部座席部の窓がボディーと同色塗装された、車高の低いアレだった。
「オイ、てめえコラァ!!」
ウインドウを下げて顔を乗り出したのは、日本の元気なBボーイ二人衆である。
一度シカトして通り過ぎようと思ったが、戻って、
「ゴメン!ゴメン!いや、スイマセン!申し訳ない!!」と、平謝りに平謝りを重ねてオルガンバーへ急いだ。
もうトラブルはイヤなのである…

 『オルガンバー』で毎月おこなっている『Groovy Sauce』は、QYPTHONEのフランチャイズイベントだ。リハーサルをしていると、オーガナイザーのエリカちんを始め、馴染みのメンツが続々集結してくる。僕らの気持ちを和やかにさせる、第二のファミリーの出迎えである。「ヨーロッパどうだった!?」と、我が事のように興味を持って聞いてくれる彼ら。「いやあ、石垣さんがラリって気絶してさあ!」誰に聞かれてもタケシの説明はそこから始まるので困る。

 エースだらけのDJ布陣、キャラの濃い常連さん達が集えば、フロアで一汗かき、ラウンジでショット、そしてまたフロアへという、血中アルコールを大回転させる『Groovy Sauce』ならではの儀式が始まるのだ。誰もが痛快なほどの酔いっぷりを示してくれる。
 憂さを晴らすもよし、歓びを心ゆくまで満喫するもよし、ベテランクラバーも初心者も愉しめるくつろぎの別世界。『Groovy Sauce』、『Groovy Sauce』、毎月第二土曜(04年1月だけ第三土曜ですよ)、オルガンバーへぜひお越し下さい。

 慣れた感じでDJからライブへの引渡しが行われる。泉ちゃんとタケシの夫婦漫談が始まる。日本語ならではの強みだ。
永久にオチがやってこない泉ちゃんの暴走をシーケンスのスタートで遮ると、これが合図となってオーディエンスのダンスが再開された。
勢いよく踊り出した観衆の熱気、11月だというのにまだ暑い異常気象による余熱は、このフロアをサウナルームに変える。
東京から発信され、ヨーロッパを沸かせてきたこのライブスタイルは、やはりこの東京で絶大な力を発揮するようだ。
タケシと泉のパフォーマンスも、観客に身を委ねるように羽を広げ、水を得る。
我々をヨーロッパへ送り込んでくれた皆さんよ、ありがとう!
最後に叩き込まれたMPCのサンプル音は、ツアーの終わりを告げるファンファーレだ。
バンザーイ!

 とっても楽しい19日間だった。感情のギャップの激しさ、何もかもが新鮮な光景、失敗と成功、笑いと感動、我々がこの19日間で学んだ事、内臓を通過した肉の量、アルコールの量は実に大きい。こうして楽しい思いができたのも、日本と海外のファンの温かい支えがあってのことである。陳腐な言い方だが、お客様は神様だ。陳腐というか古い。古いというか三波春夫だ。こりゃいかん。最後のシメはもっとカッコイイ事がいいたいのだ。感動の一大巨編を締めくくるに相応しい、誰もが思わず唸ってしまう最大のオチが…

 …オチをどこかに忘れてきたようだ。これを書いている今はもうクリスマス。明日は再びモスクワライブへ旅立つことになっている。
 ちょっと探して来ます。



は〜〜るばる、来たぜオ〜ルガン〜〜


さ〜〜かまく〜波を乗り越えて〜〜


ドジャース・石井系のBM君と巨人・上原系の陽ちゃん。


そして丹下・だん平系の那須野君です。


みなさんの笑顔に会うために帰って参りました!


エリカちんのCDの売り方。


グルーヴィー名物のショットです。


とにかくみんな酒好き揃いです。


前列のキミ、半目になってまっせ!


日本で初めて売ったEU盤ですよ!


以上、執筆者はわたくしでございました。
ごきげんよう!