2003EU

 Mittwoch 5 Nov.


 ヨギは「僕、計算駄目だあ」と頭を抱えながらイベントやCDの売り上げを何度も数えている。ユーロ、ルーブル、スイスフラン、その時々に変動する為替相場、あまりの変数の多さにその大変さが想像できる。ドイツ語で『42』は『ツヴァイ・ウント・フィアツィヒ(2と40)』とひっくり返って数えるが、『442』になると『フィアフンデルト・ツヴァイ・ウント・フィアツィヒ(400と2と40)』と訳の分からない順番で数えるので、なおさら大変そうだ。

 アレックスやドミニクは仕事に出かけているため、他のルームメイト達にお礼を言って部屋をあとにし、駅へ向かう。駅構内でロバートと泉ちゃんに朝食の買い出しを頼み、残った3人は荷物をICEの車内に運び入れると、出発間際、アレックスが車内まで見送りに来た。彼は僕らにミックスCDをプレゼントするためにわざわざ仕事を抜け出してきたのだ。特急が出発してしまうので、僕らは短い時間で心からのお礼を要約して告げると、彼を車内から追い出した。慌ただしくしていないと離れがたさが増してしまうので、別離の時は短いのが実は一番良いのだ。

 三度目のフランクフルト。三度目の正直で、明日はようやくこの地でのライブとなる。ヨギは日本から直にツアーに参加したため、一度挨拶のため近くにある実家に帰って行った。他の4人は三たび、マリコの部屋へ向かうのだが、駅前に車を止めているタクシードライバーにロバートが声をかけると、突然、両者の間で何ごとかドイツ語による激しいやりとりが始まった。
 白い顔を紅潮させて珍しく怒りを露わにするロバートの姿に、僕らはあっけに取られる。どうやらタクシードライバーが「グートロイテ通り?近すぎるから他のタクシーに頼んでくれ。」といったニュアンスの事をのたまったらしい。ロバートの強い説得で仕方なさそうにソイツは乗せる気になったようだが、部屋に着いてからもロバートは「アイツ、最悪だ。」と乱暴な仕草でタバコを吸い始める。仕事をキッチリ全うしない態度は、僕らにとっても最悪の部類に入る人間だ。ムカムカする僕たちの腹に今詰め込むべきは、もう、肉、しかない、と思うけど、どうでしょう?だから肉を食いに行くの、どうでしょう。

 胃が脳の働きをしているキップソーンのメンバーは、分厚いステーキやムール貝のワイン蒸しやビールが胃に集合すると、さっきのムカツキなどとうに忘れ、笑顔の食卓である。僕らの感情や行動は肉汁の量の大小によって影響を受けるので、機嫌を取る際は肉をチラつかせれば事足りる。ほんと手間いらず、『脳いらず』で助かるわー。



スイス国鉄の公式時計、MONDAINEです。


フランクフルトへ帰ります。


フランクフルトの象徴。ユーロ銀行のオブジェです。


ハロウィーンの残骸を発見。


ムール貝のワイン蒸し。これがウマイのだ。


またこいつらの道草が始まった。


滑ったね?はいはい、じゃ帰りますよ