2003EU

 Dienstag 4 Nov.


 段差の多い地形、石畳、教会や市電など、古き良き欧州の風情を残す街並み。チューリッヒは子供の頃思い描いていたヨーロッパのイメージにピッタリの町だ。美しい景観の鑑賞にまったく興味を示さない無風流な二名(タケシ、泉)を残し、高尚な我らは街を眺め歩いた。「趣を感じますなあ。」「あの鋭角的な屋根などよろしゅうございますなあ。」ほんとは良く分からないのだが、ま、高尚だ。
 部屋に戻ると二人がいない。高級ブランド『Bally』の本店がチューリッヒにあり、買い物に出かけたらしい。全く物欲にまみれておりますなあ、二人とも。

 今夜はラクレットパーティーだ。ラクレットというのは、溶けたチーズにソーセージや温野菜をからめて食べる、フォンデュに似た料理方法である。「本物のラクレットを食べさせてあげる。」とドミニクがエプロン姿で待機していた。以前フランクフルトで食べたことがあり、その時には小さな鉄板が10枚ほどセットされた道具を使ったのだが、どうやら「それは邪道」らしく、今夜のテーブルには見たこともない本格的なラクレットマシンが設置されている。
 直径30cmの円形を半月状にカットしたチーズを台座にセットして、赤外線で温めて溶けだしたカット面をこそぎ落とし、それぞれの皿に盛りつけていく。一人一人順番を待たなければならないのが難点だが、食べた人の悦楽の表情を羨ましそうに見ながら順番を待たせるのも演出のひとつだろう。いよいよ僕の皿に盛られたアツアツにとろけたスイス産の本格派チーズ。口に含むと芳醇な味わいが口いっぱいに拡がり、思わず目を閉じて気が遠くなるほどの旨さだ。本格派チーズはまた、あらゆる酒と絶妙のマッチングを示すため、これはもう、とことんまで人間を駄目にする。テキーラ、ワイン、スイスウォッカ、次々とビンを空にした僕たちは、ロバートの「外でグルグル回ろうぜ!」という意味不明の提案にヘラヘラ笑いながら大賛成してしまうような、駄目な大人の代表になっていた。

 外でグルグル回る。左手で右の耳たぶをつかみ、前に伸ばし右腕を軸にして、10回まわるのだ。フラフラしてキャッキャ言ってたら、向かいのホテルのフロントの人に「うるさいです!」と注意された。それにも構わずこの後も50メートル走2往復、噴水の水かけ合戦数セットと、僕らの意味不明さは動物行動学的に説明するのが困難な様相を呈してくるが、簡単に言うと、まあ、『酔っぱらい』だ。

 高尚な人間への道は遠い。



ブランチ。


公園ではこんな風景も。のんびりしてます。


よく見ると教会の向こうにアルプスが!


なんとも…


ヨーロッパです。


陽も暮れてきたところで、


ラクレットパーティー始めますか、ワ〜ワ〜!


これが本物のラクレットマシン。


調理人はドミニクです。


あまりの旨さに目がウツロです。


早くオレも〜


何やってんですか?


目が回る〜〜!


ヨ〜イドン!


ラララララ〜


キャッキャキャッキャ。
ついて行けん…